生活・文化・芸能の神様
武内宿禰(たけのうちのすくね)
◆この神様の別称
高良玉垂神(こうらたまたれのかみ)
◆この神様の神格・神徳
神格:長寿の神、宰相の神
神徳:延命長寿、武運長久、厄除け、立身出世、商売繁盛、子育て、試験合格、勝負必勝など
◆この神様が祀られている全国の主な神社
高麗神社[埼玉県入間郡日高町]
鵜甘神社[福井県今立郡池田町]
石清水八幡宮(末社)[京都府八幡市ハ幡高坊]
気比神宮[福井県敦賀市曙町]
宇倍神社[鳥取県岩美郡国府町]
住吉神社[山口県下関市一の宮町]
徳威神社[愛媛県東予市吉田]
高良大社[福岡県久留米市御井町]
新田神社[鹿児島県川内市宮内町]
その他各地の八幡宮など
伝説では、360歳という長寿を誇り、5代の天皇に仕えるなど、様々な故事から、延命長寿や武運長久の神、宰相の神として崇められています。
『古事記』によれば、武内宿禰は第ハ代孝元天皇の孫で、母は珍彦(うずひこ)の娘・山下影日売(やましたかげひめ)とあります。
珍彦(うずひこ)は神武天皇の東征に海峡の神として登場する紀伊国造の祖です。
また武内宿禰の7人の子は、大和朝廷を支えた葛城氏、平群氏、蘇我氏、巨勢氏、紀氏、波多氏、江沼氏の祖と伝えられています。
さらに『古事記』では、景行天皇に始まって成務天皇、仲哀天皇、応神天皇、仁徳天皇まで、5代の天皇に224年間にわたって仕えたと記されます。
武内宿禰の神霊としての性格は、神事に関わり、神主、霊媒者として特殊な能力を発揮するとも伝えられます。
『日本書紀』には神功皇后が神田の溝を掘る際、邪魔になった大岩を武内宿禰が祈り招いた落雷が打ち砕いたという話が出ています。
この伝承との関連があるのが、福岡県の高良大社の祭神の高良玉垂神です。
この神様は、八幡神の第一の随神とされる神ですが、武内宿禰と同神ともいわれました。
『因幡国風上記』逸文に、武内宿禰は稲葉国亀金に下向し、宇倍山中腹の亀金岡に双履を残して360余歳で世を去ったとあります。
現在、鳥取県岩美郡国府町にある宇倍神社には、本殿裏にその名残として双履石があります。
天手力男命(あめのたぢからおのみこと)
◆この神様の別称
天手力雄命
手力雄介
◆この神様の神格・神徳
神格:力の神、技芸の神
神徳:技芸上達、五穀豊穣、スポーツ向上、開運招福、災難・厄除けなど。
◆この神様が祀られている全国の主な神社
伊勢神宮内宮(相殿)[三重県伊勢市宇治館町]
船橋大神宮[千葉県船橋市宮本]
湯島神社[東京都文京区湯島梅園町]
戸隠神社[長野県上水内郡戸隠村]
雄山神社[富山県中新川郡立山町]
手力雄神社[岐阜県岐阜市長森蔵前]
佐那神社[三重県多気郡多岐町]
安賀多神社[宮崎県延岡市安賀多町]
「天上界で一番手の力が強い男」という神名をもつ天手力男命は、天岩戸の扉を開けて天照大神(あまてらすおおみかみ)の手を引いて導き出し、この世に太陽の光を復活させるために活躍した神様です。
この神話で太陽神:天照大神の手を引いたことから、神名に「手」が入っていますが、力の神として性格は人間の肉体の筋力に宿る霊の神格化とも考えられています。
一般的に神話では、怪力ばかりが前面に出ていますが、この神様はスポーツの守護神としても信仰を集めています。
トレーニングを積み筋力を鍛え、それを生かすテクニックを含めたパワーを与えてくれる霊力を備えた神様さまでもあるのです。
また、天手力男命を祀ることで有名な長野県上水内郡の戸隠神社には、この神様の怪力ぶりを示す伝説があります。
天岩戸の扉を開けた天手力男命は、開けた扉を放り投げました。
すると、ものすごい地響きをたてて地上に落下し、戸隠山になったといいます。
そして、そこが自分の住むところと決めました。
その後、天孫降臨に随伴して九州に降り、紀伊(和歌山県)を経て戸隠にやって来て定住したといわれています。
天鈿女命(あめのうずめのみこと)
◆この神様の別称
天宇受売命
◆この神様の神格・神徳
神格:芸能の神
神徳:武芸全般守護、芸能上達
◆この神様が祀られている全国の主な神社
佐倍乃神社[宮城県名取市愛島笠島]
志波姫神社[宮城県古川市桜の目]
椿岸神社(椿大神社摂社)[三重県鈴鹿市山本町]
千代神社[滋賀県彦根市京町]
佐留女神社(猿田彦神社境内社)[三重県伊勢市宇治浦田町]
芸能神社(車折神社境内社)[京都府京都市右京区嵯峨朝日町]
増御子神社(大和神社摂社)[奈良県天理市新泉町]
天鈿女命は、『日本書紀』に「巧みに俳優(わざおぎ)をなし」と記されているように、天岩戸に隠れた天照大神(あまてらすおおみかみ)を外に誘い出すために、熱狂的な踊りを披露したことから、日本の芸能のルーツとされる女神です。
その熱狂的な踊りは、岩戸の前に集まってい神々の大きな笑いと歓声をよび、大変に楽しくにぎやかな雰囲気となりました。
その騒ぎが気になった天照大神が外をのぞいた時、力の神の天手力男命(あめのたぢからおのみこと) が外に導いたといわれています。
こうして世界に太陽の光が戻ったという有名な天岩戸神話が残っています。
また『古事記』や『日本書紀』に書かれる「俳優なして」との表記が、俳優のルーツともいわれます。
「わざ」とは神のわざ(所作、行為、技)のことを指し、簡単にいえば神がのり移ったような振る舞いととれます。
その「わざ」の振る舞いは、天鈿女命が卑狽な演技で神々を笑わせたように、古くから道化、滑稽というものがその振る舞いの中心的な要素として含まれていたといえます。
また天岩戸神話は「鎮魂祭(ちんこんさい)」の儀礼の起源だと考えられています。
そもそも「鎮魂祭」とは、太陽の活力の再生と生命力の再生など世の中の平安を祈願する儀式です。
天岩戸での活躍の後、天照大神(あまてらすおおみかみ)の側近として仕え、瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)の天降りに随行して地上に降ることになりました。
その途中、天八街で国つ神の猿田彦命(さるたひこのみこと)と運命の出会いがあり、これが縁で2神は結婚します。
その後、猿田彦命の故郷である伊勢国(三重県)に住み、宮廷祭祀の鎮魂祭や大嘗祭(だいじょうさい)などに関わる猿女君(さるめのきみ)の祖神となりました。
元々は神事芸能のルーツとされる神ですが、あらゆる神々をも魅了する踊りのパワーから、舞楽の神、歌舞伎などの演劇の神、俳優の神、その他技芸全般の神として信仰されています。
猿田彦命(さるたひこのみこと)
◆この神様の別称
猿田毘古神
植田彦大神
精大明神
◆この神様の神格・神徳
神格:導き(道案内)の神、道の神
神徳:延命長寿、災難・方位除け、厄除開運、商売繁盛、殖産興業など
◆この神様が祀られている全国の主な神社
椿大神社[三重県鈴鹿市山本町]
白髭神社[滋賀県高島郡高島町鴨川]
巻堀神社[岩手県岩手郡玉山村巻堀]
高山稲荷神社[青森県西津軽郡車力村]
大野湊神社[石川県金沢市寺中町]
二見興玉神社[三重県度会郡二見町]
平野神社[滋賀県大津市松本上町]
大麻比古神社[徳島県鳴門市大麻町]
志和稲荷神社[岩手県紫波郡紫波町]
都波紋・奈加等神社[三重県鈴鹿市一宮町]
猿田彦神社[三重県伊勢市宇治浦田町]
伏見稲荷大社[京都府京都市伏見区深草薮之内町]
祐徳稲荷神社[佐賀県鹿島市古枝]
その他各地の塞の神・道祖神としても祀られています
猿田彦命は、猿とも天狗ともいわれる怪奇な風貌をしていて、有名な天孫降臨神話に登場することから、日本の神様の中でもかなりの人気者にランクされます。
猿田彦命は、高天原から天降ろうとしていた天孫:瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)一行を迎えるために天の八街(衛は四辻のことで、天のハ衛は地上に降る道が四方ハ方に分岐している場所で、案内がなければ道に迷ってしまう難所である)まで出向きました。
ところが、持ち前の怪奇な風貌のため一行に怪しまれてしまいました。
そこで随行していた天鈿女命(あめのうずめのみこと)が瓊瓊杵尊に、何者か素性を問い質すよう命じられ猿田彦命とやりとりしたのです。
そこで「天孫の道案内のために来た国つ神です」と答えた後に先導を許され、瓊瓊杵尊一行を日向の高千穂まで導きました。
この神話から、猿田彦命が「導きの神」と考えられるようになったのです。
瓊瓊杵尊一行を日向の高千穂に先導した後、瓊瓊杵尊の命を受けてた天鈿女命に送られて伊勢国の狭長田の五十鈴川のほとりに帰りました。
そしてその地で天鈿女命と結婚して住んだとされています。
これらのことから、猿田彦命が伊勢地方と密接に関係する神霊だったことが明確になっています。
その原像は、原始的な男性の太陽神として伊勢の海人が信仰した神だったという説が有力です。
『古事記』では、天の八衛に現われた猿田彦命を「上は高天原を照らし、下は葦原中国を照らす神」と記されています。
『日本書紀』にも、その眼が「八咫鏡(やたのかがみ)のごとく赫やく」とあって、そこからも太陽をイメージすることができます。
八咫鏡は三種の神器のひとつで、太陽神:天照大神(あまてらすおおみかみ)の依り代とされるものですので、その神器に例えられる猿田彦命は太陽神と結びつけられてもおかしくはありません。
また、この神様は「衛の神」とも呼ばれています。
その役割は道案内であり、行路の安全を守ることを意味しています。
これらの基本的な性格から、猿田彦命は様々な民俗的な信仰とも結びついています。
一番庶民的で人気を得ているのが「道祖神」としての一面です。
道祖神は、基本的には邪霊を防ぐ神で、そこから「塞の神」、「境の神」としての機能があります。
同時に「道の神」としての信仰もあることから、通行人の行路の安全を守る道の神:猿田彦命と結びついたのです。
さらに道祖神として路傍に祀られるようになると、江戸時代には「庚申様」とも習合しました。
これは「猿」と「申」の共通性から、神道家によって結びつけられたようです。
古代の性器崇拝信仰の金精様も、猿田彦命の神霊の一つです。
金精様は、道祖神信仰の性にまつわる部分だけを取り出したような神様です。
男女の縁結び、出産、性病治癒などの霊験ありとして信仰されています。
全国各地に金精神(金精大明神、金勢大明神)を祀る神社はありますが、その多くは祭神が猿田彦命です。
この理由も、金精神と道祖神との結びつきからきています。
猿田彦命は、天孫:瓊瓊杵尊を道案内した神話に結びつく道の神の信仰から、交通安全の守護神として警視庁にも祀られています。
また、天鈿女命と結婚したことから縁結びの神としての信仰もあります。
矢乃波波木神(やのははきのかみ)
◆この神様の別称
箒神(ほうきがき)
波比伎神(はひきのかみ)
屋乃波比伎神
◆この神様の神格・神徳
神格:産神、屋敷神
神徳:家屋敷の守護、助産婦・乳母の神、安産・育児守護、家内安全、招福など
◆この神様が祀られている全国の主な神社
伊勢神宮[内宮域内[三重県伊勢市宇治館町]
徳井神社[兵庫県神戸市灘区大和町]
高忍日売神社[愛媛県伊予郡松前町]
矢乃波波木神は、一般的な民間の信仰では「箒神」として知られる神様です。
神名の文字の通りにゴミを掃くホウキという日常的な生活用具のイメージされるように、身近な家の神様です。
また、この神様は出産に関する神様としても知られています。
理由はいろいろありますが、「掃く」という言葉と「箒(ほうき)」という言葉が「ハハキ」と解釈され、その音が「母木」に通じるという説が有力です。
さらに、ゴミを掃除する能力は、穢れ(けがれ)を祓う(はらう)呪術につながり、それが胎児を掃き出す安産守護の霊力として発揮されるようです。
矢乃波波木神は古来、朝廷が伊勢神宮の宮地内の敷地の神霊として崇めていたといわれています。
よって本来は、屋敷神や土地神の性格をもつ神格だったことがわかります。
これらのことから、この神様の原像は「産土神(うぶすながみ)」に近いと考えられます。
産土神は土地に宿る神霊で、土地に住む人々の生活を支配しています。
天石門別命(あめのいわとわけのみこと)
◆この神様の別称
櫛石窓命(くしいわまどのみこと)
豊石窓命(とよいわまどのみこと)
◆この神様の神格・神徳
家内安全、無病息災など
門の神様といわれています。
◆この神様が祀られている全国の主な神社
櫛岩窓神社[兵庫県多紀郡篠山町福井]
天乃石立神社[奈良県添上郡柳生町]
天岩門別神社[広島県山県郡大朝町]
天岩門別神社[岡山県英田郡英田町滝宮]
天岩門別神社[高知県高岡郡越知町]
大祭天岩門彦神社[島根県浜田市相生町]
天石門別命(あめのいわとわけのみこと)は、天孫降臨に随伴して地上に降りた門の神様で、古事記では櫛石窓命(くしいわまどのみこと)とか豊石窓命(とよいわまどのみこと)などといわれています。
古代から門は堅固な石でつくられており、神が宿るものとされていました。
よって天石門別命(あめのいわとわけのみこと)の本来の性格は石の堅固さを象徴する精霊でした。
やがてその門が石造か何造かに関わらず、どこの門にもこの神様が宿ると考えられるようになりました。