商売・職人等産業の神様
久久能智神(くくのちのかみ)
◆この神様の別称
久久能遅神(くくのちのかみ)
木祖神(きのおやがみ)
◆この神様の神格・神徳
神格:木の神
神徳:国土開発、山林業守護など
◆この神様が祀られている全国の主な神社
公智神社‥兵庫県西宮市山口町
樽前山神社‥北海道苫小牧市矢代町
久久能智神は木の神で、山や森の木々をはじめ鎮守の森や通りの並木などの樹木なども皆この神様が支配しているといわれています。
さらに、この神様は単に「木の精霊」というだけでなく、もっと根源的な大地に樹木が生える生命力の神格化なのです。
『古事記』での久久能智神は、伊邪那岐命(いざなぎのみこと)と伊邪那美命(いざなみのみこと)が自然の神々を生んだ際に現われた木の神で、つづいて山の神:大山祗神(おおやまづみのかみ)、野の神:鹿屋野姫神(かやのひまのかみ)が生まれました。
久久能智神がこの2神よりも先にて生まれているのは、木々が山を緑で覆って生命力が満ちることを象徴する神様だからと考えられています。
日本に樹木の緑をあふれさせる神様である久久能智神は、木種の神である素遺嗚尊(すさのおのみこと)、その御子神の五十猛命(いそたけるのみこと)や大屋津姫命(おおやつひめのみこと)と共に、山林業の祖神として信仰されています。
埴山姫命(はにやまひめのみこと)
◆この神様の別称
埴山毘売神(はにやまひめのかみ)
埴安神(はにやすのかみ)
◆この神様の神格・神徳
神格:土の神、陶器の神
神徳:田畑の開墾守護、陶磁器業守護、子宝、安産守護など
◆この神様が祀られている全国の主な神社
榛名神社[群馬県群馬郡榛名町榛名山]
大井神社[静岡県島田市大井町]
愛宕神社[京都府京都市右京区嵯峨愛宕町]
迩幣姫神社[島根県大田市長久町]
埴山姫命は田畑の土や陶器をづくる粘土などの土をつかさどる神様です。
農業、陶磁器製造業、造園業、土木関係の職業などに縁の深い神様といえます。
神名の「ハニ」は赤土の粘土を意味しており、古代には陶器や瓦の原料とされ衣類につけて模様を付けることにも用いられました。
神名に託された意味から想像すると、埴山姫命は粘土を用いて器をつくる作業をつかさどる陶器の祖神の姿が見えてきます。
陶器といっても、埴山姫命がつかさどるのは祭祀に用いる特別な器です。
埴山姫命は、水の神:罔像女神(みずはのみのかみ)とともに生まれています。
穀物の成長には土と水のエネルギーが必要です。
埴土を水で練ってつくられた祭具は、土と水の霊力を象徴しています。
それらの祭具を用いて日の神を祀ることで、作物の成長に必要なエネルギーはより強くなります。
古代では、このように新たなエネルギーを生む儀式を行い、作物が順調に成長して、豊かに実ることを願ったのです。
稚日女命(わかひるめのみこと)
◆この神様の別称
稚日霎命
◆この神様の神格・神徳
神格:機織の神、祈雨の神
神徳:健康長寿、祈雨、商売繁盛、疫病除け、縁結び、子宝安産など
◆この神様が祀られている全国の主な神社
生田神社[兵庫県神戸市中央区下山手通]
今宮戎神社[大阪府大阪市浪速区恵美須西]
比々多神社[神奈川県伊勢原市]
香良洲神社[三重県一志郡香良洲町]
稚日女命は『日本書紀』にいくつか登場します。
まず、稚日女命が天照大神(あまてらすおおみかみ)の神聖な機殿(はたどの)で機織の作業をしていたら素遺嗚尊(すさのおのみこと)が機殿の屋根に穴を開けて斑馬(まだらうま)の皮を剥いで投げ込んだ際、驚いた稚日女命は機織から落ちて、持っていた横糸を通す道具を陰部に突き剌して死んでしまったという話があります。
また神功皇后が新羅遠征の後に船で大和へ向かっている時に、神戸の沖合で船が進まなくなりました。
そこで武庫の港(兵庫県の武庫川の河口付近)に寄って占いをしたところ、稚日女命が現われ「生田神社にいたい」と託宣したとのことです。
そこで言われた通りに生田神社に祀ると、海は平穏になり船を進めることができたという話です。
稚日女命は、神功皇后の新羅遠征の際に海路の安全を守護した神だったのですが、その帰りに神戸にとどまりたいと主張したのは、元々神戸の産土神(地主神)だったからなのです。
その後、生田神社に祀られた稚日女命は、平安時代には有力な風雨の神として朝廷から手厚く祀られました。
神大市姫命(かみおおいちひめのみこと)
◆この神様の別称
大市比売命(おおいちひめのみこと)
市姫神(いちひめのかみ)
◆この神様の神格・神徳
神格:市場の神、五穀神
神徳:市場の守護、百貨店の神、商売繁盛、開運招福、女性守護など。
◆この神様が祀られている全国の主な神社
市比売神社[京都府京都市下京区河原町通り]
大内神社[岡山県備前市香登本]
その他各地の市比売神社
神大市姫命は、山の神である大山祗神(おおやまづみのかみ)の娘で、素遺嗚尊(すさのおのみこと)と結婚して倉稲魂命(うかのみたまのみこと)や大年神(おおとしのかみ)、という代表的な農業神・穀物神を生んでいます。
このようなつながりから神大市姫命は、五穀の神の性格をもっていることが分かりますが、実際にその霊力が発揮されているのは「市の守護神」という姿なのです。
「神大市」という名前は、「神々しい市」とか「立派な市」という意味です。
市の歴史に関する伝説は、推古天皇の時代に聖徳太子が市を創始して商売の方法を広めたというものがあります。
全国にいくつか「大市」と名の付く地名が残っていますが、歴史をたどると昔は市が形成されたことと関係がありそうです。
少彦名命(すくなひこなのみこと)
◆この神様の別称
少毘古那神(すくなびこなのかみ)
◆この神様の神格・神徳
国土安穏、産業開発、漁業・航海守護、
病難排除、縁結び、安産・育児守護など
また穀物神、医薬神、酒造の神、温泉神などいわれる
◆この神様が祀られている全国の主な神社
酒列磯前神社[茨城県那珂湊市磯崎町]
大洗磯前神社[茨城県東茨城郡大洗町]
札幌神社[北海道札幌市中央区宮ヶ丘]
温泉神社[福島県いわき市常盤湯本町]
温泉神社[栃木県那須郡那須町湯本]
武蔵御嶽神社[東京都青梅市御岳山]
御嶽神社[長野県木曽郡王滝村]
少彦名神社[大阪府大阪市中央区道修町]
大神神社[奈良県桜井市三輪町]
温泉神社[兵庫県神戸市北区有馬町]
湯神社[愛媛県松山市道後湯之町]
一番メジャーな少毘古那神(すくなびこなのかみ)は、医薬の神としての存在です。
「薬神」と書いて昔は「クスシノカミ」と読んでいるが、薬師が崇敬した守護神という意味があるそうです。
他には、酒造や温泉の神としての信仰もあることから、身体の健康に関する霊力を発揮する神様だといわれています。
神仏習合の祭は「薬師如来」とされることもあります。
少毘古那神(すくなびこなのかみ)は、日本神話の中でも人気者でヒーロー性も持っています。
御伽草子の一寸法師のルーツとされていることや、小さい神様ですが大国主命(おおくにぬしのみこと)と二人で国づくりの大事業を成し遂げた点などが魅力です。