工業・道具や技能の神様



天之御影命(あめのみかげのみこと)

◆この神様の別称
明立天御影命(あけたつあめのみかげのみこと)

◆この神様の神格・神徳
神格:刀鍛冶の神
神徳:鍛冶・鋳物業守護、家内安全、開運招福、災難除けなど

◆この神様が祀られている全国の主な神社
御上神社[滋賀県野洲郡野洲町]
額田神社[三重県桑名市額田]
日前・国懸神宮[和歌山県和歌山市秋月]

天之御影命は刀鍛冶の祖神です。
父は天津彦根命(あまつひこねのみこと)で、子は意富伊我都神(おおいがつのかみ)で、やはり刀鍛治の守護神として信仰されています。

中世以降、鎌倉時代から室町、安土桃山時代にかけて天之御影命は武神としての崇敬を集めたこともありました。
また、鉄を鍛えるのに火は不可欠なことから、鍛冶の神は元々火をつかさどる神霊としての性格を備えています。
鋼を熱して火をつかさどり、美しい刀剣を産み出す霊力を発揮するというのが天之御影命の本来の姿でしょう。



玉祖命(たまおやのみこと)

◆この神様の別称
天明玉命(あめのあかるたまのみこと)
羽明玉命(はのあかるたまのみこと)
櫛明玉神(くしあかるたまのかみ)

◆この神様の神格・神徳
神格:玉造の神
神徳:宝石、眼鏡、レンズ、カメラなどの業種守護

◆この神様が祀られている全国の主な神社
玉祖神社[大阪府八尾市神立]
石作玉作神社[滋賀県伊香郡木之本町]
玉作湯神社[島根県八束郡玉湯町]
玉諸神社[山梨県塩山市竹森]
玉祖神社[山口県防府市右田大崎]
その他の玉祖神社など

玉祖命は、天岩戸の前で天照大神(あまてらすおおみかみ)を慰撫するための祭具として八坂瓊曲玉(やさかにのまがたま)をつくった神様です。
『古事記』の天岩戸神話では、この神がつくった八坂瓊曲玉が大玉串に飾られ大神に捧げられました。
この曲玉は、その後、天孫降臨のときに天照大神から瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)に八咫鏡(やたのかがみ)と共に授けられて、地上の統治権を象徴する「3種の神器」の1つとなりました。

『古語拾遺』(平安初期の成立)では、「櫛明玉神(くしあかるたまのかみ=玉祖命の別名で玉作湯神社の祭神)は出雲国の玉作りの祖神である」と書かれています。
玉作湯神社は、『出雪国風土記』や『延喜式』等に載っている古い神社です。
伝承では、素遺嗚尊(すさのおのみこと)が天照大神に献上した八坂瓊曲玉は、元々櫛明玉神が素遺嗚尊に贈ったものだともいわれています。



石凝姥命(いしこりどめのみこと)

◆この神様の別称
伊斯許理度売命(いしこりどめのみこと)

◆この神様の神格・神徳
神格:金属加工の神、鍛冶の神
神徳:鍛冶・金属加工の神、鉄鋼、金物業守護、産業開発など

◆この神様が祀られている全国の主な神社
鏡作坐天照御魂神社[奈良県磯城郡田原本町]
鞴神社[大阪府大阪市天王寺区生玉町]
中山神社[岡山県津山市一宮]
日前・国懸神社[和歌山県和歌山市秋月]

石凝姥命は鏡職人の神様で、指物工芸の守護神としても崇敬されています。
この女性神は、三種の神器の1つとして有名な八咫鏡をつくった神様でもあります。
この鏡は、神社の御神体とされている鏡の元祖的存在で、天岩戸神話には、天岩戸に隠れた天照大神(あまてらすおおみかみ)を誘い出すための祭りで、この神様が鏡を作った事が話られています。

鏡は日の神が地上に降りて来る時の媒体であり、農耕祭祀における非常に重要な祭具でした。
銅鏡や銅矛は青銅器時代のもので、後に大陸から製鉄技術が伝来すると、銅器は鉄器に取って代わられていくことになったのです。
そうすると石凝姥命は元々青銅器の神様で、鉄の普及とともに登場した他の鍛冶や金属加工の神々よりも、かなり古い神様だと考えられます。



天目一箇命(あめのまひとつのみこと)

◆この神様の別称
天之麻比止都禰命(あめのまひとつねのみこと)

◆この神様の神格・神徳
神格:山の神、火の神、金工・鍛冶の神
神徳:農業、漁業、金属工業などの守護や眼病守護

◆この神様が祀られている全国の主な神社
多度大社別言・一目連社[三重県桑名市多度町]
鞴神社[大阪府大阪市天王寺区]
伊須流岐比古神社[石川県鹿島郡鹿島町]
天目一神社[兵庫県多可郡田野村]
竹田神社[滋賀県蒲生郡蒲生町]
金屋子神社[島根県飯石郡吉田町]

天目一箇命は、天照大神(あまてらすおおみかみ)の子の天津彦根命(あまつひこねのみこと)を父とする鍛冶の神様です。
『古事記』の天岩戸神話では、隠れた天照大神を誘い出すための祭りに使う刀剣類や斧や鉄鈴をつくった神様といわれています。
このような職人の神様として「鍛人天津麻羅(かぬちあまつまら)」と呼ばれています。
そして天孫降臨の際、瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)に随伴して降臨し、鍛冶の祖神となりました。
地上に鍛冶の技術をもたらした天目一箇命は、日本の金属文化の創始者といえる神様なのです。

日本の八百万の神々の中でも天目一箇命は、「目が1つ」という珍しい印象をもちます。
この印象は、なんとなく1つ目の妖怪を想像してしまいます。
紀伊国(和歌山県)熊野の山中には、片目片足の「一本ダタラ」という妖怪がいるといわれます。
その呼び名から山の神と天目一箇命が結びつけられています。
「タタラ」は踏鞴(たたら)と書いて、古代の製鉄所のことをさします。
これらのことから片目片足の妖怪は、昔山の中のタタラ(製鉄所)で働いていた鍛冶集団が祀った山の神と関係があると考えられています。

ところで、何故1つ目なのでしょうか?
有力な説は、鍛冶の職人が鉄を鍛えるときに片目を閉じて作業をするからだという説。
または、昔の製鉄所の職人は炉の火の色を見て片目で見て温度を判断していたという説があります。

三重県桑名市の多度大社は、金属工業の守護神としての信仰を受けています。
また同時に古くから風・水・火難除けの信仰もあって、農漁業守護に霊験ありといわれています。
古代の人たちは、太陽を1つ目として農耕の守護神である雨の神(龍蛇信仰・雷神)を結びつ
けたのでしょう。



金山彦命(かなやまひこのみこと)

◆この神様の別称
金山毘古神(かなやまひこのかみ)
金山大明神

◆この神様の神格・神徳
金銀銅山・石炭山の守護・金属加工業の守護
金運隆昌・商売繁盛・開運招福・災難避け・厄避けなど
包丁の神様としても有名です。
また鉱山の神、鍛冶の神、鋳物の神ともいわれる。

◆この神様が祀られている全国の主な神社
黄金山神社[宮城県牡鹿郡牡鹿町]
川口神社[埼玉県川口市]
南宮大社[岐阜県不破郡垂井町]
敢国神社[三重県上野市]
金峯神社[奈良県吉野郡吉野町]
中山神社[岡山県津山市]
金屋子神社[島根県能義郡広瀬町]など

金山彦命(かなやまひこのみこと)は、伊邪那美命(いざなみのみこと)が火の神である迦具土神(かぐつちのかみ)を産む時に苦しみながら吐いた嘔吐物から、金山姫命(かなやまひめのみこと)と共に生まれた神様です。

一緒に生まれたとされる2人の神様は、兄弟神とも夫婦神ともいわれています。
どちらであったかはハッキリしていませんが、神話ではない場面でこういう話があります。
製鉄の守護神としてタタラ(製鉄所のこと)に祀られている金屋子神(かなやこしん)がこれら2人の御子神(みこがみ)であるとされています。
この話を重要視した場合、この2人の神様は夫婦神という説が有力になっています。